江差屏風(えさしびょうぶ)
小玉貞良「江差屏風」/182cm×382cm
紙本彩色 屏風(六曲一隻)
18世紀中頃(江戸時代宝暦年間)
初期松前藩政を支えたのは近江商人でした。彼らは松前地の生活物資や、エゾ(アイヌ)交易商品と産物の安定移出入や鰊漁資金の提供を通して産業の発展に寄与し、松前藩への拠出金も大きいものがあったといいます。
〈江差屏風〉には、江戸時代中期およそ宝暦年間(1751~1764)のころ、鰊漁を背景に勃興著しい江差のまちとその周辺の賑わいが描かれています。
通りには商家や蔵が建ち並び、背後の高台には奉行所や寺社が配されています。通りを武士や町人、物売りが行き交い、前浜では漁師が鰊漁に忙しく、浜辺についた船からは次々に荷揚げが行われています。アイヌ文様を施したアットゥシ(樹皮衣)やレタラペ(白いもの-草皮衣)を着用する漁夫たちの姿は江差の繁栄や鰊製品の背後にある、北の世界・蝦夷地を彷彿とさせています。
江差屏風は、近江商人が蝦夷地の様子やその活動を伝えるために、城下松前の様子を描く松前屏風と一対で制作したとされていますが、この江差屏風と対になる松前屏風は伝えられていません。末尾に松前産竜円斉貞良筆 印 とあり、小玉貞良の作とされています。
※現在は長期保存を目的として北海道に譲渡され、公立はこだて未来大学の最先端デジタル技術によって制作された精密な写真複製を展示